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ろめ日々の雑記=すなわちその日どんなネタを考えていたか、と化している妄想屋の日々の戯言



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 こうさぎが、さいきん、すうじをよく言う。
『3♪』
とか
『24♪』
とか
『5と…15、6-!』
とかだ。

「なんのはなしだ…」
 けいさんのべんきょうをしているところにユージュが来て「忙しいんでちょっとよろしくお願いします」とかなんとか言って、こうさぎをおいていった。
 わたしだってひまではないのだ。
 今日中に、99かける99までおぼえてしまおうとしているのに、どうしても97のだんでつまずく。つまずくから、いっそひょうにしようと思って、すうじときごうをかみにかいている。
 97かける56が5432で良かったのか、いっしゅんふあんになってるところで、こうさぎが言った。
『フィンウェが占ってあげるね♪』
 ……う、うらない?
『きょうのあなたは友人です』
 …………。
 ………じゃあ、明日のわたしは友人ではないと言いたいのだろうか…。
 ためいきをついて、わたしがかみにかおをもどすと、こうさぎは首をかしげて言った。
『準備?』
 じゅんびどころでなく、ほんばんまっさかりだ。このけいさんをやっつけたい。5432?これで良かったっけ?
『フィンウェ♪うさぎ♪逍遥♪』
 こうさぎはきげんよく言うと、とびはねて、つくえからおっこちた。

 そういうことがあったのですと父上におはなししたら、父上はちょっとなさけなさそうなおかおをして、「数字は私が教えたんだろうねぇ」と言った。
 3と5と24、それと15、6?父上はいったいなんのおはなしをなさったんだろう。
「まあ、何て言うか…3+5+16で24だったわけだよ。夢の話さ」
 父上のおっしゃることは気になったけど、父上がちょっとかなしそうにほほえまれるので、わたしはそれいじょう聞かないことにした。
「今日は、99かける99まであんしょうしました」
「計算をしてたの?どうだった?」
「すうじでひょうをつくったのです。あれはべんりです」
「ああ――、そうか、計算は覚えなくっても良いよね…」
 父上がふっとためいきをこぼすので、わたしはなんだかどぎまぎした。
「………言葉も記号があればいいのに」
 ちいさなこえで言われたことに、わたしはぱっとなにかがひらめいたと思った。
「じゃあ、わたしが、つくってさしあげます!」
 せんげんすると、父上はびっくりしたように目をまるくして、そのあと、ふわっとわらった。
「フェアナーロ、本当に君は私の誇りだよ。愛してるよ!」
 おやすみのキスのまえに、ほっぺたにキスをもらった。うれしくてにこにこしていたら、父上はでもね、とわらった。
「無理はしちゃだめだよ?おやすみ、フェアナーロ」
 むりなんかしない、と思ってるうちにおやすみのキスがふってきて、それで、わたしは、ねた…。

 +++   +++

「……5人の予定だったけど、うん、1人でもあんまり愛しすぎるなぁ…」
 てれてれしながらフィンウェはフェアナーロの寝室を去っていった。
 『夢』の内容は『幸せ家族計画』。
「父上と母上とわがひとで3人でしょ。こどもが5人でしょ。孫が15、6人で計24人の私の大家族♪」
 と、昼にこうさぎに語ったのだった。
 過程はだいぶ狂ったが、こども5人と孫16人の夢を、後々確実に叶えることを、フィンウェもこうさぎも、勿論知らない。


++++++++++++++++

 お知恵ちゃんのきりぺた「24」は『幸せ家族計画番』でした(爆)。
 こども5人が3人ずつこども作れば確かに15、6人の孫が出来ますけど…。すでに父上と母上がいない時点で頓挫してるんですよね、お知恵さんの計画は(笑)。
 ところがどっこい、自分と妻ふたりという解釈をいれれば、血の繋がってるのの孫までで24人、まぁ、言えなくはない…。
 weraさま、きりぺた踏んで頂いてありがとうございました♪お知恵ちゃんはちっちゃいフェアノールが地道に面倒みてます!(おいこらユージュー!)

 次の番号…どうしよう…(爆)。
 こうさぎはよくねる。で、ねごとが、ヘンだ。
『フィンウェ…』
 わたしはびくっとした。こうさぎのねごとはとつぜんはじまるので、かなりどきっとする。
『名か…』
 大あたりだが、どうなんだろう、このねごとは。
 こうさぎはむにゃむにゃと、わたしのひざの上でかおを上げると、
『息子♪』
 と言った。………。わ、わたしは、こうさぎを父上にもったおぼえはなくってだな…(でも、わ、わるくは…ない)。
『顔…声…顔…むにゃむにゃ』
 どうしようかとおもっているうちに、こうさぎはまたねた。
「あれー、さっきはうさぎに拘ってたんですけどね?」
 ユージュがつんつんと横からこうさぎをつつく。
「ちょっとお知恵ちゃん、さっきアナタ面白いこと言ってたでしょう。また言ってくださいよ。せっかくクルフィンウェさま居るんですから」
 こうさぎは言った。
『うさぎが…本…うさぎは…フェアナーロ…むにゃむにゃ』
 ………わたしはうさぎではない。ユージュはにこにこしてさらにつつく。
『うーん…つまり…うさぎが…フェアナーロ…うさぎ…うさぎ…』
「………お、…お知恵、…ちゃん、…わたしはうさぎではないぞ」
『うさぎが…うさぎは…こは…つまり…むにゃむにゃ…』
 こ!? 子か!? 子なのか!?
 こうさぎは父上のお名前をもっているので、わたしとしては気になる。
『うさぎは…こ…』
 だからわたしはうさぎではないと言うに!おもったとき、こうさぎは、ぱちっと目をあけて言った。
『うさぎー!』
「ねー、うさぎに拘ってるでしょう?」
 口をまげたわたしにすりすりして、こうさぎはさらに言った。
『フェアナーロ♪うさぎ…』
 そのうさぎがついてなければもっとうれしかったんだが。わたしはちょっとわらった。
「お喋りでちゃんと覚え始めたみたいですねぇ。お知恵さんすごい勢いでクルフィンウェさまのこと話してましたからね」
「…え」
「でも、うさぎは何でしょね?」
 ユージュはたぶんちょっとうれしいかおになったわたしに、にんまりわらって言った。
「もしかしたら、“フェアナーロっていう名前のうさぎ”のこと話してたんだったりして…」
 !!
 わたしはいそいで、父上のところにむかった。

 ++ ので、ここからはフェアナーロは知らない話 ++

 ユージュは昼間にこうさぎに構い倒して去っていたフィンウェを目撃しているのだが(すきま時間の実に有効な活用法だと彼女は思った)、話の内容はなんというか、微妙に子どもには聞かせられない類のものも混じっていたと思う。いや、むしろ子どもでは分からないか?
 そんなことを考えながら、聞き疲れたか眠っているお知恵ちゃんをそっと突いたら、物凄くお知恵さんに良く似た声でこう言った。
『エルウェ…』
 クルフィンウェさまがいなくて良かった、とユージュは心底安堵した。眠ったままのこうさぎを抱き上げると、こうさぎはむにゃむにゃと更に言った。
『前提か…』
 ナニが前提でナニをする気なんだ。
 お知恵ちゃんってどのくらいお知恵さんと似てるのかなぁ…
 今度フィンウェさんに聞いてみよう、とユージュは思った。彼がマトモに答えてくれるのか、そもそも答えを知っているのかは置いておいて。
 ちょっとずつしゃべり出した、と言うので、かまいに行ってみた。
『薬?』
 くすり、は、べつに用もないのでもってない。
『席?』
 どこに行きたいのだ、このこうさぎは…。
『目ー!』
 さけばれても、こまる……。
 しばらくかまっていると、そのうちねた。
 やっぱりひこひこしているおなかをつつくと、
『腕…むにゃむにゃ』
 どんなゆめを見ているのやら。

「なーんか、日常会話が耳に入んないみたいなんですよ」
 むー、とせいだいにうなってユージュが言った。
「んで、今、策を講じ中なんですけど、………実験的にですね、語りを聞かせましたらあーゆー感じで喋り始めたんですよ」
「何のかたりを聞かせたのだ?」
「何でしたかねぇ。イロイロですよ、イロイロ」
 ユージュはじぶんにつごうがわるくなると、“イロイロ”でごまかす。またきっとヘンなはなしでも聞かせたんだろう。

 しゃべり出したこうさぎは、たんごでしかものを言わないので、いまいち声がどうの、とかはわかりにくい。
「日常会話の方が聞けるようにイロイロやっておきますから♪」
 とユージュがようきに言った。
 こうさぎをむぎゅっとしたら
『本気♪』
 と言った。じつは聞こえてるんじゃないかとおもう。
「お知恵ちゃんって言うより愚かちゃんだ!」
 言うと、ユージュがケタケタわらった。
「そりゃ、めざめたてなんですから全然愚かちゃんでしょーよ。怒っちゃダメですよ。忍耐ですよクルフィンウェさま」
 そう言われたからまってみることにはしたが、やっぱりこうさぎのフィンウェはお知恵ちゃんと言うより愚かちゃんだ。
 つついてみても、何を言っても、つぶらなひとみでわたしをじーっと見つめて「むにゃむにゃ」しか言わない。このまえ、ねむってるときにつついてみたら(おなかがひこひこしててかわいかった)、「ZZZ…」だって。ちょっとあきれた。
 でも、そのよくわからないむにゃむにゃ声でも、ほんのちょっと父上に、にてる、気がする。
 ………せいちょうが、たのしみかもしれない。

+++  +++
………こうやって書くのなら、多分できる。
 こうさぎが父上とおんなじなまえなのは、ちょっとヘンだとおもう。
 だって、それならわたしは、このこうさぎをなんて呼んだらいいんだろう?
 と、とつぜんこうさぎは目をさまして、わたしのうでからとびだして、はねていってしまった。
「あ…」
 父上のおなまえを呼びすてにするのもはばかられて、どうしようかまよっているうちに、こうさぎは角をまがって見えなくなった。
「ま…まてっ」
 あわてておいかけていくと、角の向こうから「ぎゃー」という声がきこえた。
「お知恵ちゃんちょっとあんた!お知恵さんから逃げて来たの!?」
 角をまがるとそこには――
「んもー悪いこうさぎだなっ!めっ!」
 大きなこげ茶色の目をした女の人が、こうさぎをつかまえて、ゆかにぺったんとすわっていた。……こうさぎはなついている。
 わたしがちかづいていくと、その人はかおを上げて「あ」と言った。
「あー、クルフィンウェさま、こんにちは」
「そなたはだれだ?」
「こうさぎの世話役です。ユージュと申します。お見知りおきを。……お知恵ちゃんなんかしましたか」
 ユージュはこうさぎをだっこしたまますわりこんでいる。立ってもたぶん、ふつうのおとなよりずっと小さいせたけだろう。
「そのこうさぎは、わたしが父上からいただいたのだ」
 ユージュはへえ~、と言った。
「呼びにくいですよねぇ」
「え」
「名前。叱りにくいですよ“こらフィンウェ!”って。ねぇ?」
 わたしはあたまがちょっとぐるぐるするのをかんじつつ、うなずいた。
「なので私はこの子を“お知恵ちゃん”って呼ばせていただきます。良いですよね?」
「お知恵ちゃん…」
「フィンウェさんがお知恵さんなんで。ちっちゃいフィンウェさんつまりお知恵ちゃん」
「お知恵ちゃん…」
 わたしはもう1回つぶやいた。こうさぎがユージュのうでから出て、足元によってきた。
「あ、定着しましたね。あー良かった。フィンウェって呼ばないと反応しなかったんですよこの子。フィンウェさんが楽しそーに呼びすてするから」
「よびすて…?」
 しかめつらをしたわたしのまえで、ユージュはまくしたてた。
「そーです。そりゃもう楽しそうにフィンウェフィンウェ呼びすてしながらむぎゅっとしたりなでなでしたり。ご自分の名前呼んで何が楽しいんですかねぇ」
 わたしのあたまの中ではそのこうけいが、かなりしっかりおもいうかんだ。………。
「父上のかんがえていらっしゃることは、たまに、よくわからない…」
「クルフィンウェさまもわっかんないんですね。んじゃ私がわかるわけないですね」
 わたしはしみじみ言うユージュのまえで、こうさぎの“フィンウェ”…お知恵ちゃんをだっこした。

+++  +++
遊んでます。
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